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脱力・麻痺

脱力や麻痺というとまずは脳疾患を疑いますが、重要な点が2つあります。

1.発症した時の状況、2.片側なのか両側なのか ということです。1についてはある時突然なったのであれば脳梗塞や出血などの脳卒中を疑いますが、段々となってきたのであれば慢性硬膜下血腫や脳腫瘍を考慮します。また2.の片側性か両側性については両側性であれば脳外科的疾患というよりは内科的疾患や脊髄に関連する疾患などを第一に考えます。また手足の麻痺(動かしにくさ)が30分間出現したが、改善したというような時は脳梗塞の前兆である可能性が高いのですぐに受診頂けますと幸いです。

脳に異常がある疾患

a.脳梗塞・脳出血

脳卒中と称されるものですが、頭蓋内に異常がある場合は基本的に左右差があります。両上肢の脱力、両下肢のしびれなどの症状では頭蓋内疾患の可能性はかなり低くなります。脳梗塞・脳出血ともにMRIにて早期でも正確に診断が可能です。(CTでは急性期脳梗塞の診断が難しいことが少なくありません。)

b.一過性脳虚血発作

脳梗塞の前駆状態と考えられ、梗塞へ移行する確率が高い病態です。特に高齢の方や血圧が高い方、糖尿病を合併されている方なので左右差を伴う麻痺を10分以上生じた場合は入院し、抗血栓薬の点滴加療を要することがあります。症状が消失しても手足の脱力が左右差をもって一定時間あった場合は必ずご受診ください。

c.脳腫瘍

脳腫瘍が運動野や運動神経線維を圧迫することで症状が出現します。運動麻痺をきたす脳腫瘍として頻度が多いのは転移性脳腫瘍、髄膜腫、神経膠腫、リンパ腫などです。造影剤を使用したMRI検査にて診断が可能です。

d.てんかん発作

脳梗塞・脳出血・脳挫傷後などで傷んでいる部分や脳腫瘍で圧迫されている部分の脳細胞が異常な電気信号を発生させ、体が痙攣する病態です。痙攣せずに、脱力したり、失語と言って言葉が出なくなったり、意識障害を来したりすることもあります。

e.慢性硬膜下血腫

頭部外傷後3週間-3か月の間に硬膜より脳側に血腫が段々と形成される病気です。頭部外傷が先行しないケースもあります。徐々に進行する歩きづらさや脱力が特徴です。他に頭痛や認知症進行などを伴うこともあります。診断にはMRIによる画像検査が必要です。

脊髄・脊椎に異常がある疾患

a.椎間板ヘルニア

背骨は全部で31個ありますが、その間は椎間板というクッションの役割を果たす軟骨が位置しています。これが加齢などの影響で後方に飛び出し、脊髄や脊髄から出る神経を圧迫することで症状が出現する病気です。手指の動かしづらさの他、腰痛や手足のしびれなども見られます。MRIにてヘルニアの診断は可能で、治療はまず腰椎コルセットや鎮痛剤で経過をみます。症状が強く、よくならない場合は手術が検討されます。

b.脊椎硬膜外/下血腫

脊髄硬膜下もしくは硬膜外に血腫が貯留し、脊髄圧迫を起こすことで発症する疾患です。特発性が多く、非常に稀ですが、症状には特徴があります。通常脳梗塞では血管解離を除き、疼痛を伴うことは稀なのですが、手足の麻痺+頸部-背部痛で来院された方は大動脈解離の他にこの疾患を疑います。診断にはMRIが有用で、脱力症状をきたしているようであれば手術加療が検討されます。

c.脊髄腫瘍

脊髄腫瘍は10万に1-2人と稀な病気です。症状として特徴的なものはなく、多くは疼痛で発症します。その後、しびれ、運動障害、排尿排便障害と進行していきます。診断が遅れることが多く、臨床的に疑った場合は造影の脊椎MRI検査を実施します。

d.脊髄動静脈シャント疾患

脊髄や脊椎の動脈と静脈が直接繋がってしまう病気です。40万人に1人程度のかなり稀な疾患です。血流の流れがうっ滞することで症状を来しますが、うっ滞する部位により症状は異なります。脊髄腫瘍同様に疼痛、しびれ、運動障害、排尿・排便障害などの症状が出現します。こちらもMRI検査で診断が可能となります。

全身性疾患

a.ギランバレー症候群

急性の多発性神経炎症疾患で、ウィルス感染が先行することが多いです。風邪と胃腸炎型があり、臨床的特徴が異なります。症状は左右対称性に下肢の筋力低下から出現することが多く、顔の表情筋の麻痺や眼を動かす筋肉が麻痺して、物が二重に見える複視を来すこともあります。重症例では呼吸障害を来しますので、迅速な診断・加療が重要です。検査は髄液検査や神経伝導速度検査などを要しますので、近医高次医療機関のご紹介致します。

b.重症筋無力症

重症筋無力症は末梢神経と筋肉の接合部に自分で自分を破壊してしまう自己抗体が出現することで発症する疾患です。夕方に強くなる全身の疲労感、筋力低下がよくある症状です。特徴的な症状としては眼瞼下垂といってまぶたがうまく開かなくなる症状と複視という物が二重に見える症状です。診断は採血にて自己抗体を測定することで行います。重症例では呼吸困難となることもあるので注意が必要です。

c.低血糖

内服薬やインスリンによりしっかりと血糖コントロールされている糖尿病患者様が食事摂取不良の時や、血糖のコントロール中に起こすことがあります。発汗や生あくび、不安感などのいわゆる低血糖症状の他に意識障害や麻痺など、脳卒中を疑わせる症状が出現することも少なくありません。

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