耳鳴り・難聴
一般的に耳鳴り、難聴などはまず耳鼻科疾患が考えられます。
下記のようなものがその例です。
難聴は伝音性難聴と感音性難聴に分類され、また聞こえない閾値により重症度が決まります。耳鳴りについてはまず自覚的なものか他覚的なものかを鑑別することが重要となります。
次に音の種類や高低、片側性なのか両側性なのか慢性なのか急性なのかなどの特徴により疑われる疾患が異なります。
当院では難聴・耳鳴りの原因となるような頭蓋内疾患の除外を主として診療させて頂きます。
耳鼻科疾患が原因と疑われる場合は近医の信頼できる耳鼻科様にご紹介させていただきます。
1.加齢=老人性難聴
加齢に伴い内耳に存在する有毛細胞が減少することにより発症すると言われています。
有毛細胞は音による空気振動を脳で認識させるために電気信号へと変換する機能を有しています。
年齢が上がるにつれて発生頻度は高くなり、65歳以上で25~40%、75歳以上で40~66%、そして85歳以上では80%に達します。
高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣病が危険因子と考えられています。
このうち3割程度で耳鳴りを生じると言われています。
聴力低下に対して適切に対処しないと周囲の人とのコミュニケーションが取りづらくなり、引きこもりやうつ病、認知症に繋がるとも言われています。
生活に支障をきたすレベルの難聴では補聴器の使用をお勧めします。
2.騒音性難聴
慢性的に激しい騒音にさらされることで徐々に聴力が低下する病気です。
一定の基準を満たせば職業性疾病として労災認定を受けることもできます。
一般的には85dB以上の騒音に8時間以上さらされ続ける状態が5-15年ほどあると発症リスクが高まると言われています。
85dBは"間近で聞く救急車のサイレン"程度です。
聴力低下は両側性で初期に障害を受ける音域は日常会話で使用される音域と一致しないので、日常生活に大きな支障がなく気づいた頃には重症な障害となっていることもあります。
騒音におりダメージを受けた有毛細胞を回復させる方法は現在の医学ではありません。
騒音環境の改善などの予防が重要となります。
3.薬剤性難聴
薬剤が原因で起こる難聴です。
騒音性難聴と同様で日常生活では使用頻度が低い高音領域の聴覚障害から始まるので気づかずに病状が進行することがあります。
難聴だけでなく、めまいや耳鳴りを伴うこともあります。
原因となる薬剤は抗菌薬であるアミノグリコシド系(ゲンタマイシン)やグリコペプチド系(バンコマイシン)などが有名です。
この他、利尿薬や抗癌剤なども原因となります。
アミノグリコシド系や抗癌剤による難聴は回復が難しいので、早期発見・予防が肝要となります。
4.メニエール病
めまいをきたすことでも有名な耳鼻科疾患です。
体の平衡感覚を司どる内耳にリンパ液が貯留することで生じる病気で、30-50歳代に多く発症します。再発を繰り返す過程で、聴力が低下してくことが特徴です。
ストレスや疲れが溜まっていると再発しやすくなるために十分な休養をとることが必要です。
メニエール病は聴神経腫瘍によるめまい・難聴と鑑別が難しいので一度は頭部MRIにて頭蓋内疾患の除外が必要です。
メニエール病の治療は薬物、鼓室内注入、手術(リンパ嚢開窓術)と3種類あり、症状が強く難治性であれば、専門医療機関での加療を要します。
5.突発性難聴
何の予兆もなく朝起きたら耳が聞こえなかった、電話で相手の声が突然聞きにくくなったなど突然にして前触れもなく起こる難聴です。
音を感じ取る有毛細胞がウィルス感染や血流障害で傷つき、壊れることで発症するとされていますが、はっきりとした原因は不明です。
治療薬は点滴や内服によるステロイド治療やPGE1製剤、VitB12製剤(メチコバール®)、代謝促進製剤(ATP製剤=アデホス®)などがあります。ストレスの影響も考えられるときは安静に過ごします。
十分に回復がみられない場合はステロイド鼓室内内注入療法が行われることもあります。
必要と判断すれば専門医療機関をご紹介致します。
6.中耳炎
中耳炎とは鼓膜の内側に起こる感染症で、口腔内の雑菌が耳管を介して中耳腔を冒すことで発症します。
子供は耳管が広いので発症しやすくなります。
発熱、耳痛、耳閉塞感を呈し、抗生剤加療や場合によっては鼓膜切開と膿排出が必要となります。
強い症状を伴う急性中耳炎以外にも鼓膜に穴があく慢性中耳炎、耳の痛みがなく難聴が強くなる滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎、アレルギー性中耳炎などがあり、それぞれ専門的治療が必要です。
頭蓋内疾患が除外され、中耳炎が疑われる場合は信頼できる専門医療機関にご紹介させて頂きます。
一方で頭蓋内疾患が難聴や耳鳴りを来すこともあります。代表的なものが下記の疾患です。
1.聴神経腫瘍
脳神経は1-12番で12本ありますが、そのうち8番目の聴神経に出来る腫瘍が聴神経腫瘍です。
耳鳴りというよりは難聴が出現します。
片側性の難聴では上記疾患の除外が必要ですので、MRI検査を実施します。
診断されば場合は小さければまずは経過観察、増大傾向があり、聴力温存手術が必要であれば専門医療機関に紹介をします。
また発見時に既に聴力が失われており、小脳や脳幹などを圧迫するような大きなものであれば開頭腫瘍摘出術が必要ですので、やはり近医医療機関にご紹介致します。
2.硬膜動静脈瘻
比較的に有病率の低い後天的疾患です。
静脈洞閉塞症に発症のリスク因子となります。
頭の皮膚、硬膜などの血管が硬膜上で静脈に直接(毛細血管を介さず)に繋がってしまう疾患です。
静脈に高い動脈圧がかかることで静脈のうっ滞が起きて、頭痛や痙攣を呈したり、静脈圧が上昇しすぎて、脳出血を起こしたりします。
耳鳴りは、動脈から静脈に血流が流れている音がざー、ざーと拍動性に聞こえることが原因です。
診断はMRIにて可能ですが、詳細な検査を要するので診断された場合は近医医療機関にご紹介し、造影CT(CTA)、脳血管造影検査が必要となります。
治療が必要と判断された場合はほとんどのケースで血管内治療によりシャント部位を閉塞するような治療を実施します。
3.片頭痛
頭蓋内に画像でわかるような異常はないものの、定期的に起こる強い頭痛です。
拍動性で片側性のことが多く、光や音で増悪することも特徴です。症状の一つとして耳鳴りを来すこともあり、頭痛が随伴しているかどうかの問診が重要となります。
片頭痛の発作時にはNSAIDsやスマトリプタン系の治療薬があり、適切に使用する必要があります。
また頭痛回数が1か月に4階回以上あるならば予防治療(内服・注射)も検討されます。