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脳卒中後再発予防管理

脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を合わせた総称となります。いずれも脳血管の病気であり、ある程度共通した誘因があることが証明されています。残念ながら、脳卒中に一度罹患した患者様は、他の方と比較して高い再発リスクを有しています。しかしながら、脳卒中のリスクファクターを可能な限り、管理・除外することで限りなくその再発率を他の方と同程度まで低下させることができます。当院では下記に示す脳卒中リスクファクターについて全人的にアプローチさせて頂きます。

①高血圧

高血圧は脳出血と脳梗塞に共通の最大の危険因子です。血圧の値と脳卒中発症率には直線的な正の関係があることが証明されており、血圧が高い程、脳卒中発症率も上昇します。高血圧治療が脳卒中予防に極めて有効な根拠となる試験も沢山発表されています。
診察室での血圧が140/90mmHg以上を高血圧として、非薬物療法、降圧薬投与の開始が推奨されています。また糖尿病、蛋白尿のなる腎機能障害、心臓・脳血管疾患の既往、抗血栓薬内服の一つでも当てはまる方は血圧130/80mmHg未満を目標血圧とすることが重要です。降圧剤は1カルシウム拮抗薬(アムロジピン®、カルブロック®など)2 利尿薬(ラシックス®、アルダクトン®、セララ®、フルイトラン®など)3 ACEi/ARB(レニベース®、アジルバ®、テルミサルタン®、バルサルタン®など)、4 β遮断薬(アーチスト®など)があります。糖尿病、慢性腎臓病、発作性心房細動(不整脈)、心不全合併などがある場合は特に3 ACEi/ARBが推奨されています。
血圧手帳に毎日の血圧を記入頂き、当院はご持参頂けますと幸いです。

②糖尿病

糖尿病は脳梗塞の確率された危険因子です。最近の研究では糖尿病により脳梗塞で2.27倍、脳出血で1.56倍も発症リスクを高めると発表されています。しかしながら、現状糖尿病のコントロールが良いことが脳卒中抑制に繋がるエビデンスはありません。一方で次項でも説明する脂質異常症の管理が重要となります。スタチンというコレステロールを下げる薬により糖尿病患者の脳梗塞リスクが約30%低下したというデータがあります。

③脂質異常症≒高脂血症

高コレステロール血症は脳梗塞危険因子であることが報告されています。コレステロールは血中の脂分を示しています。脂質の多いものを食べると高くなり、血管の内膜にプラークという塊が出来てきます。プラークは増大し、やがて血管を狭窄、最後には閉塞することになります。これがいわゆる動脈硬化ということです。LDLコレステロール(悪玉)と中性脂肪の両方を低下させることで既に出現してしまったプラークを退縮(小さく)する効果が確認されています。当院では採血で積極的にLDL,TG(中性脂肪)の値を測定し、脂質異常症の管理、つまり動脈硬化にアプローチをしていくことを心掛けています。

④心房細動

とても危険な脳梗塞の危険因子であり、未治療では脳梗塞発症率が年間平均5%となります。これは心房細動のない人と比較して最大7倍も高い値です。脳塞栓症予防の治療は抗凝固療法となります。以前はワーファリン®という薬が64%も脳卒中発症率を低減する効果があり、非常に有効とされていました。しかしながら、薬効が人によって大きくことなり、PT-INRという値でそれぞれに管理が必要なことや食事制限があること、また合併症としての出血率が無視できないことなどから現在は、心臓の弁に異常がなく、かつ透析をしていない心房細動の患者様には新規抗凝固薬(エリキュース®、リクシアナ®など)が第一選択となっております。心房細動の患者様で下記CHADS2 スコアで1点以上であれば薬物療法開始の基準となります。心房細動が原因となる脳梗塞は主幹動脈と呼ばれる太い血管が突然閉塞することで発症します。脳梗塞の範囲がかなり広く、甚大な後遺症を起こしたり、場合によっては生命危機となったりもします。抗凝固薬の内服は欠かさず、お願いできればと存じます。

C congestive heart failure 心不全
H hypertension 高血圧
A Age 75歳以上
D diabetes mellitus 糖尿病
S Stroke or TIA 脳梗塞・一過性脳虚血発作

⑤喫煙

喫煙は脳卒中に有意な危険因子であることが示されています。特に脳梗塞とくも膜下出血では重要です。5-10年間の禁煙により脳卒中リスクは低下すると言われています。また受動喫煙も脳卒中危険因子となりますので、回避することが望ましいです。最後に禁煙を継続するためにニコチン置換療法や社会的禁煙教育などが有効なアプローチです。経口禁煙薬チャンピックス®は禁煙達成率を有意に高めたので、本邦で使用可能となっています。

⑥飲酒

脳出血やくも膜下出血の発症率と飲酒量との間には正の相関関係がある。つまり大量飲酒では脳出血の発症率が高くなります。大量飲酒というのは週にエタノール450g以上のことです。一方で少量―中等量の飲酒者では機会飲酒者と比較して虚血性脳卒中発症率が40%程度低かったというデータが発表されています。一概に飲酒がダメとは言えなそうです。

⑦睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に無呼吸状態が繰り返される病気で、脳梗塞の独立した危険因子として報告されています。日本の潜在患者は約1000万人近くいる可能性があることが報告されています。夜間の酸素飽和度が10%低下すると血圧が13%上昇するという報告もあり、SASの治療が降圧に繋がる可能性もあります。

⑧メタボリックシンドローム

脳梗塞の危険因子として報告されています。
診断基準は女性>90cm, 男性>85cmのウェスト周囲径+下記の基準のうち2つ以上

  1. 高中性脂肪血症(TG>150mg/dl) or/and 低HDLコレステロール血症(HDL<40mg/dl)
  2. 収縮期血圧≧130mmHg or/and 拡張期血圧≧85mmHg
  3. 空腹時血糖≧110mg/dl

日本の大規模研究である久山町を対象とした研究では脳梗塞発症率が2倍程度まで増加することが報告されています。

⑨慢性腎臓病

慢性腎臓病とはGFR=糸球体濾過量が<60mL/分/1.73m2未満の腎機能が3か月以上続くものと定義されています。腎臓はかなり末期的な状態になるまで症状が出現しませんので、採血による診断が必須です。生活習慣病である高血圧、糖尿病が腎機能を長期間かけて悪化させていきます。最終的には体中が浮腫んでしまり心不全となったり、毒素が排出されず尿毒症という意識障害の状態となったりします。その場合は人工透析や腎移植などの腎代替療法が考慮されます。腎臓自体の問題もさることながら、慢性腎臓病があると脳卒中を含む心血管疾患が3倍近く増加させるという報告があります。高血圧や糖尿病の管理をしっかりと行うことで腎臓機能を保つことが出来ればと存じます。

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