良性脳腫瘍
髄膜腫
- 硬膜-くも膜から発生する腫瘍で、女性に多いです。
- 麻痺や痙攣などの症状がある場合や周囲の脳に浮腫を伴う場合は外科治療を検討します。
- 発生部位や腫瘍の大きさ、周囲の血管などとの癒着により手術難易度が異なります。
- 治療は発生母地である硬膜を含めた全摘出が目標となりますが、発生部位によっては硬膜を摘出できないものもあり、その場合は再発率が高くなります。
- 病理学的には90%以上は良性のものでありますが、10%弱で軽度悪性、1%弱で高度悪性のものがあり、悪性度が高くなると全摘出しても再発を繰り返すことがあります。
聴神経腫瘍
- 耳の神経を聴神経と言ったりしますが、これは内耳神経、上前庭神経、下前庭神経の3つの神経から構成される混合神経です。聴神経腫瘍は前庭神経に由来する良性腫瘍です。
- 小さなものでもめまい、聴覚障害をきたし、大きいものでは小脳や脳幹を圧迫し、体感失調なども出現します。
- 治療法は外科的摘出術と放射線治療(サイバーナイフなど)があります。
- 聴力が温存されている場合はまずは外来にて経過観察することが多いです。
- 摘出術は耳の後ろ側に10cm程度、皮膚を切開する外側後頭下開頭にて行います。
- 聴力、顔面神経などのモニタリングを行い、顔面神経の走行に注意しながら摘出します。
- 摘出術後合併症としては聴力温存症例では聴力障害を、全症例で顔面神経麻痺が起こりえます。また術後出血や髄液漏もリスクとなり、再手術を要することがあります。
- 外科治療後も再発の可能性はあり、数年に渡りフォローアップの必要となります。
- 聴神経腫瘍の患者様は一定数水頭症となります。シャント治療を要することがあります。
- 両側聴神経腫瘍がみつかれば遺伝性疾患であるNF-2の除外が必要となります。
下垂体腫瘍
- 下垂体の細胞が腫瘍化した下垂体腺腫がほとんどを占めています。
- 下垂体腺腫はホルモンの異常産生をするかどうかで機能性と非機能性に分類されます。
- 脳ドックで偶発的に見つかることも少なくなく、原発性脳腫瘍で2番目の頻度です。
- 非機能性腫瘍ではある程度の大きさとなり、周囲の視神経などを圧排しない限りは経過観察となります。一方でホルモン産生腫瘍=機能性腫瘍であれば治療方針は異なります。
- 下垂体腫瘍が疑われた場合は採血にてホルモン値を確認します。加えて、特徴的な臨床症状の診察も行います。有名なホルモン腫瘍は巨人症や末端肥大症などを起こす成長ホルモン産生腫瘍や満月様顔貌や中心性肥満を起こすクッシング病があります。
- 不妊症となるプロラクチン産生腫瘍はまず薬物治療が第一選択ですが、上記2つのホルモン産生腫瘍は最初から外科治療が第一選択となります。
- 外科治療は顕微鏡治療がメインでしたが、現在は経鼻内視鏡治療が主流となっています。