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視野障害

人間の視覚は眼球から受けた光信号が、視神経→視交叉→視索→視放線(側頭葉と頭頂葉)→視覚野(後頭葉)と伝わることで成立します。この経路のどこかに異常をきたす病気は視野障害を生じます。視野障害が片眼だけなのか、両眼にあるのか。両眼の場合は右側か左側からそれとも両方に耳側(外側)かなどが疾患を診断する上でとても重要所見となります。下記のように視野障害の原因を分類できます。

1.眼球内の異常

緑内障や白内障、網膜剥離など眼科的疾患であることがほとんどです。片側性の視野障害で、2以降の疾患が除外された場合は近医の眼科に紹介させて頂きます。

2.眼球への血流障害

眼球への血流は内頚動脈から分枝する眼動脈-網膜中心動脈により送られます。頸動脈狭窄症があると網膜への血流が途絶し、一過性黒内障という、片目が数秒間真っ暗になるという症状が出現することがあります。一過性黒内障を認めた場合は必ず頸部MRAによる精査を実施します。

3.視神経腫瘍

視神経原発の脳腫瘍で、ほとんどが低悪性度のものです。子供に見られ、腫瘍増大速度は遅いです。20歳以上の方にはほとんど見られません。遺伝性疾患である神経線維腫症1型(NF1)にも関連があります。

4.下垂体腫瘍

下垂体の細胞が腫瘍となり、正常下垂体や視神経を圧迫することで症状が出現します。下垂体は視交叉と呼ばれる左右の視神経が合流する部位の直下にあります。その部位を下側から圧迫すると、視野障害は両眼の外側、つまり耳側に出現し、専門的には両耳側半盲と言います。下垂体腫瘍の特徴的症状の一つです。下垂体腫瘍は病理学的には下垂体腺腫であることが多く、基本的には良性腫瘍です。腫瘍の頻度としては髄膜種の次に多く、原発性脳腫瘍(転移性脳腫瘍を除いたもの)では第2位の頻度です。下垂体は体の恒常性維持に重要な様々なホルモンを産生する部位です。

しかしながら下垂体腺腫はほとんどが非機能性と言ってホルモンを産生しないタイプのもので、このタイプは圧迫による症状がなければ手術をせずに経過観察となります。定期的にMRIにてフォローさせて頂きます。一方で、ホルモン産生腫瘍=機能性腫瘍である場合はどのホルモンが大量に作られてしまっているかによって治療方針が異なります。

ホルモン産生腫瘍の最も頻度の多いプロラクチン産生腫瘍では第一選択は薬物療法です。薬物療法が出来ない方や無効の方は手術方針となります。稀ですが、他のホルモン産生腫瘍である成長ホルモン産生腫瘍(先端巨大症や巨人症となる病期)、クッシング病(ACTH産生腫瘍)、ゴナドトロピン産生腫瘍などは最初から手術適応となります。手術は低侵襲な経鼻の治療を実施できるようになってきておりますので、近医の総合医療機関にご紹介させて頂きます。

5.視放線の損傷

頭頂葉や側頭葉に脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などが生じると症状が出現します。6.の後頭葉の損傷と比較すると視野障害単体で出現することは少なく、言葉が出にくい理解できないなどの言語障害や麻痺はないけどうまく動作が行えない失行や場合によっては麻痺を合併することが多いです。症状は目立たないので、後々になってから気付くこともあります。

6.視覚野(後頭葉)の損傷

同名半盲となります。同名半盲とは両目の同じ側の視野が見えなくなることです。例えば、左同名半盲の場合は両目の左側が見えないので、左側から迫ってくる人や車が見えずに、誤って衝突してしまうこと可能性があります。脳卒中で同名半盲となった場合は後遺症となる可能性が高いのでうまく付き合っていく必要があります。

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