メニュー

認知症

我が国における認知症の患者さんは462万人(2012年時点)と言われており、これは日本の全人口の15%にあたります。
今後認知症は更に増加すると予想されており、2025年には730万に達するとされています。
そういった環境で益々認知症診療の重要性が増しているのは言うまでもありません。

当院では認知症にどう向きあっていくのかを中核症状(記憶障害、判断力低下、見当識障害、失語など) だけでなく周辺症状(抑うつ、妄想、幻覚、不安、暴言・暴力、徘徊など)にも対しても、ご本人・ご家族様と共に真摯に向き合っていきたいと考えております。

認知症診療はまず本当に認知症なのか、それとも加齢に伴う物忘れなのかを鑑別することから始まります。
下記の表とご本人様の症状を照らし合わせて、総合的に判断します。

  認知症 加齢に伴う健忘
忘れる内容 全体 体験の一部
記憶障害以外の症状 判断障害 なし
自覚 なし あり
見当識障害 なし あり
取り繕い あり なし
日常生活への支障 あり なし
進行性 あり 極めて徐々に

次に、軽度認知障害、薬剤性、せん妄、うつ病などの除外を要します。
その上で認知症の可能性が高いと判断しましたら、次に治療により改善が見込まれる認知症なのかそれ以外なのかを鑑別致します。
ここで重要となるのでMRIと採血検査です。
治療により改善が見込まれる認知症では下記のような疾患が想定されます。

治療により改善が見込まれる認知症

水頭症

病態

水頭症は1.脳脊髄液の通り道が閉塞することもしくは2.くも膜下顆粒からの吸収力が低下することにより生じる病気です。

症状

特徴は認知症、歩行障害、尿失禁ですが、全症状を同時に示すことは多くありません。
最大の特徴は半年-2年程度で進行する歩幅の狭い、小刻みな歩容による歩行障害です。

診断

特徴的な症状とMRI画像検査、Tap testと呼ばれる脳脊髄液を排出した結果、症状が改善するかどうかの検査によります。

治療法

Tapテストの効果があるとなればシャント手術という治療の適応となります。

慢性硬膜下血腫

病態

外傷後3週間から3か月の間に症状を呈する、硬膜下に血腫が貯留する疾患です。

症状

手足の麻痺、しびれから頭痛や意識障害、認知症様症状まで血腫量と脳の萎縮程度、両側性か片側性かにより多彩な症状を呈します。

治療法

症状がある場合はドレナージ術といって、局所麻酔下に管を血腫腔に挿入するもので、15分ぐらいで終了します。
入院は3日-1週間程度となります。
症状が出現しない程度の血腫量の場合は五苓散・ケタス®などの内服薬

梅毒

特徴

現代では比較的稀な疾患となった梅毒ですが、近年は若者を中心に増加傾向と言われています。
性感染症の代表格です

症状

皮疹や硬結で病期の進行とともの消退してしまうことがあるので、診断が遅れることがあります。
進行梅毒で認知症様症状を来すことがあります。

診断

採血にて診断します。

治療法

長期抗生剤加療。確定診断した場合は専門の医療機関へ紹介させて頂きます。

甲状腺機能低下症

特徴

甲状腺ホルモンは喉にある甲状腺から産生されるホルモンで、体の代謝を助けるホルモンで、人を活発にする作用があります。
それが低下することで発症する病気です。

症状

活動性が低くなり、昼夜を問わず眠くなったり、記憶力や計算力の低下を生じます。

診断

臨床的症状と採血データにより行います。

治療法

甲状腺ホルモンの補充(チラージン®)を行えば、症状は改善します。

脳炎

病態

脳炎は脳自体に炎症が起こることで、ウィルスによる感染性のものと自己抗体による自己免疫性のものに大別されます。

原因

前者はヘルペス、日本脳炎、JCウィルスなどにより引き起こされ、急性の経過を辿りますが、麻疹ウィルスは長期間に渡り脳に潜伏感染し、時間が経ってから脳炎症状をきたすことがあります。
また後者に自己免疫性については抗NMDA,抗VGKC抗体などが有名で、他にも肺がんなどの悪性腫瘍に伴うものやSLEなどの全身性自己免疫疾患に伴うものがあります。

症状

発熱、意識障害、痙攣発作が主症状で、

診断

MRI検査の他、脳脊髄液検査(腰椎穿刺)が必要

高血糖・低血糖

特徴

高血糖もしくは低血糖では意識混濁が生じて、いつも様子が違うなど、認知症のような症状を呈することがあります。
糖尿病の既往がある患者様では栄養摂取不良やインスリン注射/経口糖尿病薬の過量により低血糖を起こしたり、逆に血糖コントロール不良で血糖500mg/dlとなると認知症様症状をきたすことがあります。

症状

通常の認知症とは異なり、症状発現が急激であることが特徴

診断

採血や血糖検査

電解質異常(低Na血症)

特徴

般的にはNaは135-145mEq/Lが正常値ですが、それを下回ることで発症します。

原因

水を1日10Lも飲む心因性多飲、いわゆる水中毒や頭蓋内疾患や頭部外傷後に起こる、脳性塩類喪失症候群(CSWS)、腫瘍や薬剤などにより起こる、ADH不適切分泌症候群(SIADH)などが有名です。

症状

Na125mEq/Lを切ってくる頭痛、意識障害などが発生します。その意識障害が認知症の様に見えることがあります。

治療法

水分制限、Na補充などで、病態に応じて治療が必要となります。

薬剤性

特徴

薬剤により認知機能低下を引き起こします。

症状

注意力低下やせん妄に類似した症状を呈することがあります。

被疑薬

睡眠薬:エチゾラム、ハルシオン、セルシン
抗精神病薬:コントミン、リスペリドン
抗パーキンソン病薬:アーテン、アキネトン
抗うつ薬:トリプタノール、トフラニール
抗てんかん薬:アレビアチン
胃薬:ファモチジン

治療法

薬剤中止により認知機能が改善します。

うつ病

特徴

精神科領域の疾患でも認知症を呈する疾患がありますが、うつ病はその代表格です。

症状

ご高齢な方のうつ病は頭痛や腹痛、悪心、物忘れなど身体的主訴が多くなる傾向にあり、それらの症状に対して対症療法を実施しても改善しません。

診断

各主訴の原因となる器質的疾患を精査しても見つからない場合は除外診断的

治療法

抗うつ薬の投

現代の医学では改善の方法がなく、うまく付き合っていく必要のある認知症

アルツハイマー型認知症

特徴

最も有名な認知症で、特に海馬・側頭葉内側面の脳細胞が変性・萎縮することで進行性に物忘れ、自発性低下、失語などの症状を来してくる病気です。

症状

構成障害と言って、時計や立方体や複雑な図形の模写がまず障害されます。
道具の使用障害や服をうまく脱いだり、来たり出来なくなると中等度のアルツハイマー型認知症でよくみられる症状です。
また80%の患者様に行動・心理症状が出現し、ご家族の負担となります。
これは易怒性や抑うつ、幻覚、徘徊などです。

治療法

現状4種類の薬で構成され、進行を遅らせる効果が証明されています。

血管性認知症

特徴

脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患により引き起こされる認知症で、脳卒中は再発することが多いので、階段状に認知症が進行していく特徴があります。

原因

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの基礎疾患や生活習慣をコントロール・見直していくことで症状進行を食い止めます。

予防法/治療法

抗酸化物質(VitE,C)や魚由来の脂質が発症に対して抑制的に働くというデータがあります。
また抗血小板薬(バイアスピリン)の投与が認知機能を保つのに有効との報告もあります。
アルツハイマー病の薬剤も一定の効果が証明されています。

レビー小体型認知症

特徴

脳神経細胞にレビー小体という異常蛋白が沈着することで引き起こされる認知症で、アルツハイマー型認知症と異なり、認知症以外にパーキンソン様症状が特徴的です。

症状

アルツハイマー病と比較すると幻視、嗅覚障害、睡眠障害を起こすことが多いです。

治療法

アルツハイマー型認知症ほど研究が進んでおらず、強い科学的根拠のある薬はありません。
またアルツハイマー型認知症には起こりにくいパーキンソン病様症状があり、認知症とパーキンソン病の薬では効果が逆のこともあり治療困難なことが少なくありません。

前頭側頭型認知症

特徴

前頭葉と側頭葉が特に萎縮することで起こる認知症で、社会性の欠如などの症状が目立ちます。
アルツハイマー病の介護者より介護負担を大きくなるとも言われております。

症状

具体的には脱抑制といって、自分で自分の感情を抑えられなくなってしまったり、口に食べ物を詰め込んだり・テーブルマナーが悪くなるなどの食事行動の異常が見られたり、おなじことを繰り返す常同行動を伴うこともあります。

アルコール性認知症(コルサコフ症候群・ウェルニッケ脳症)

病態

アルコールを多量に飲み続けることによりVit B1が欠乏し、コルサコフ症候群を引き起こし、認知症となります。

症状

コルサコフ症候群は不可逆的な神経障害で、記憶障害、見当識障害や作話といった症状を引き起こします。
コルサコフ症候群に至る前にウェルニッケ脳症という眼球運動障害や運動失調などを特徴とした病態があります。

治療法

ウェルニッケ脳症の段階ではVitB1補充により改善可能で、早期診断・加療が必要

大脳皮質基底核変性症

特徴

前頭葉に強い非対称性の萎縮を示す認知症の一種です。

症状

発症してから2~3年ほどで、四肢が硬くなってうまく動けなくなるパーキンソン症状や失行・失認が見られます。
歩行障害は、ほぼすべての症例に現れます。

診断

MRIで前頭葉に強い非対称性の萎縮を確認します。

治療法

一定の薬剤が有効との報告があります。

進行性核上性麻痺

特徴

大脳皮質基底核変性症と同じくパーキンソン症状が見られます。10万人に5人ほどの割合で見られます。

症状

眼球が垂直方向に動かなくなったり、倒れやすくなったりすることが臨床的特徴です。

診断

MRIで特徴的な第三脳室の拡大が見られます。

治療法

残念ながら現在、治療法は開発されておりません。

ハンチントン病

特徴

成人期に発症する、踊るような舞踏様の動きと精神症状を主とする遺伝性疾患です。
世代を経るごとに若年で発症し、重症化傾向となります。

症状

おどるような不随意運動、細かいことが出来なくなる巧緻運動障害、人格変化

診断

ハンチントン病は遺伝性であるため、確定診断には遺伝子検査が用いられます。
遺伝子突然変異が第4番染色体上のHTT遺伝子にあり、塩基配列の異常を確認します。

治療法

残念ながら現在、治療法は開発されておりません。

これらの疾患は現代医学では完治は難しいですが、

  1. 進行を遅らせること
  2. 周辺症状をコントロールすること
  3. 社会サービスを利用すること

本人をはじめ、ご家族の生活の質を出来る限り、確保していくことが重要です。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME