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頭痛

世界保健機関(WHO)のデータによると片頭痛は日常生活への負担が第2位と、極めて患者様の生活の質を悪化させる疾患と示されています。
本邦の大規模調査では慢性頭痛を有する人は約4000万人で片頭痛患者は約840万人と推定されております。
しかもその74.2%が頭痛によって日常生活への支障度が高まったと回答しています。

また頭痛による生産性の低下による経済損失は年間2880億円と推計されており、憂慮すべき現状と言えます。
そういった傾向を改善する方法としては1.患者様の認識改善や受診率上昇、つまり啓蒙活動と2.医療者側としては過小治療とならぬように努めることと考えます。

近年は片頭痛の予防薬として特効薬と成り得る薬剤がどんどんと発売されており、治療選択の幅が拡大しております。

普段頭痛のない方の頭痛や普段から慢性的に頭痛でお悩みの方は是非、一度ご受診頂ければ幸いと存じます。

頭痛診療において、重要なことは2点あります。

  1. 頭蓋内・外を含め器質的な異常がある疾患、いわゆる二次性頭痛を除外すること
  2. 上記以外の頭痛と診断した場合に異常なしとするのではなく、頭痛コントロールを積極的に行うこと。

下記は頭痛の原因疾患として考えられるものです。

繰り返すことが多い命には関わらない頭痛=一次性頭痛+薬物乱用頭痛

片頭痛

特徴

30-40歳代女性では5人に1人は罹患しているという高頻度の頭痛

症状

頭の片側がズキズキと脈打つように痛む。前兆がある場合とない場合がある。

原因

三叉神経とカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などが関連

治療法

発作時 一般的な鎮痛剤・スマトリプタン系 予防 抗CGRP薬

緊張型頭痛

特徴

最も患者数の多いタイプで、姿勢異常の人やストレスを抱えている人に起こりやすい

症状

後頭部中心の鈍痛で、片頭痛のように発作的と感じることは少ない

原因

首や肩の筋肉の過緊張と言われていますが、正確なメカニズムは分かっていない。

治療法

鎮痛薬による対症療法、非薬物療法としては運動プログラム、認知行動療法、針灸

三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛)

特徴

くも膜下出血以外では最も痛い頭痛です。平均1年ごとに起こり、

症状

片側性に目の奥に強い痛み(えぐられるような)を15分から3時間生じる。

原因

原因は不明であるが、飲酒が誘因となることがあり、禁酒を要す。

治療法

スマトリプタン3mg皮下注、高濃度酸素(7L/分 15分間)

後頭神経痛

特徴

後頭部から耳、顎にかけて分布する大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経と呼ばれる皮膚の神経が関連する神経痛の一種です。

症状

片側の首から後頭部、頭頂部にかけて、一瞬電気が走るように痛む。ちくちく、ずきずき、きりきしと言った痛み

原因

神経が筋肉に圧迫されることと言われており、猫背の姿勢や頸椎の変形などが誘因

治療法

基本的には1週間程度で自然治癒することが多い。

薬物乱用頭痛

特徴

鎮痛剤により逆に頭痛がひどくなる疾患。中年層で女性に多くみられます。

症状

元々の頭痛がよりひどくなる、あるいは今までの頭痛とは異なる痛みが起こる

予後

1年以内に3割が再発すると言われ、鎮痛薬の適切な使用の観察をすることが大事

治療法

被疑薬(鎮痛剤の中止)

適切な治療を行わないと進行する頭痛=二次性頭痛

脳出血・くも膜下出血

特徴

内因性の頭蓋内の出血で、脳出血は脳実質に、くも膜下出血はくも膜下腔という脳の隙間に血腫を作ります。

症状

脳出血は頭痛に加え、麻痺や失語を来すことが多いです。
くも膜下出血では脳出血のように脳実質に出血がなければ、強い頭痛以外に症状を示さないことも多々ある。
このような患者様を絶対に見逃してはいけないと考えています。
何故なら脳動脈瘤破裂の場合、翌日まで20-30%程度再出血をきたし、その場合の致死率は50%にも及ぶと言われているからです。

原因

脳出血はほとんどが穿通枝と呼ばれる0.2mm程度の血管が長期に渡る高血圧の影響で変性を起こし、出血する。
一方でクモ膜下出血は主幹動脈と言われる比較的太い血管の分岐部が瘤状化した動脈瘤が破裂することで発症する。

治療法

脳出血は血腫が小さければ血圧を下げて、止血剤を投与し、経過観察。
大きければ血腫除去術を実施。
くも膜下出血は脳動脈瘤が原因であれば血管内治療(コイル塞栓術)や開頭術(クリッピング術)にて脳動脈瘤の再出血予防治療を実施します。

脳腫瘍

特徴

脳腫瘍は悪性腫瘍と良性腫瘍に分類されますが、診断はあくまで病理学に基づきます。
つまり摘出、少なくとも生検をして、顕微鏡で細胞を確認して診断するということです。
とは言え造影剤を併用したMRI検査を実施することで、腫瘍の染まり方、周囲の脳への影響、多発性の有無、腫瘍の局在などを基にある程度の質的診断、つまりどんな腫瘍かを予測することが出来ます。
腫瘍による頭痛はその他の頭痛と区別できるような特徴はありません。
診断の為には画像検査を実施するほかなく、可能であればMRIを実施した方が正診率はあがります。

下垂体卒中

病態

下垂体や下垂体腫瘍の梗塞、出血により頭痛・悪心・嘔吐・視力障害などを起こす病態です。

症状

下垂体機能低下症や急性服腎不全、視力・視野障害などを進行性に後から起こす可能性があり、非常に注意が必要です。

治療法

副腎不全に陥ると重度の倦怠感を訴え、その場合は速やかにステロイドの補充が必要となります。
下垂体腫瘍が原因の場合は経鼻内視鏡手術も検討されます。その場合は近医の高次医療機関にご紹介致します。

脳動脈解離

病態

動脈は内膜・中膜・内膜の3層構造からなっていますが、何らかの原因で内膜に亀裂が入りそこから血流が侵入することで発症します。

症状

頭痛・頸部痛のみの場合もあるが、脳梗塞や最悪、くも膜下出血となることもある。

原因

特発性(原因不明)であることも多いが、線維筋性異形成、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群などの血管の膜が弱くなる病気が関わっていることもあり、鑑別が必要。

治療法

頭痛のみであれば血圧を下げて経過観察。
脳梗塞であれば抗血栓薬の点滴加療。脳出血があれば脳動脈瘤に対して再出血予防治療が必要。

三叉神経痛・舌咽神経痛

病態

脳神経は全部で12種類、左右2本ずつあるので、24本の血管が脳幹から起始しております。
そのうち、5番目と9番目の神経が三叉神経と舌咽神経です。
それぞれ顔面と咽頭部の感覚を司っています。
この神経に小脳を栄養する血管や静脈が接触し、圧迫することで疼痛を生じる。

症状

痛みは激烈で、発作的に数秒から数分続きます。
痛みのあまり自殺を考える人もいる程である。

診断

MRIにて神経が画像に圧迫されている所見と特徴的な疼痛性状に基づく。

治療法

テグレトール®による疼痛発作コントロールを試みるが、発作コントロール不良の場合は微小血管減圧術が検討される。

髄膜炎

特徴

脳脊髄液の感染症であり、特に細菌性は重症化すると命に関わる重篤な疾患。

症状

発熱と頭痛、首の硬さが特徴

原因

原因によりウィルス性、細菌性、真菌性、結核性、無菌性に分類できる。

診断

腰椎穿刺により得られた髄液の分析

治療法

基本的に抗生物質や抗ウィルス薬による点滴が必要

慢性硬膜下血腫

特徴

外傷後3週間-3か月程度で発症する硬膜下に血腫が貯留し、脳を圧迫する病気。

症状

70歳以上の方で段々と、頭痛、ふらつき、認知症進行、軽度麻痺が出現する

診断

症状が脳梗塞と重なる部分もあり、MRIで診断・鑑別が可能

治療法

血腫量が少なければ五苓散®、ケタス®などの薬物療法で、多ければドレナージ術が必要。

低髄液圧症候群

特徴

起立時に生じるもしくは増悪する頭痛が特徴。40歳前後で女性が2-3倍多い。

病態

通常成人では髄液圧は70-150mmH2Oという値であるが、これが60mm未満となることで起きる。

原因

むち打ち損傷後やスポーツ外傷後に脊髄硬膜が損傷し、そこから髄液が漏出することで低髄液圧となることもあるが、一方で、特に誘因なく特発的に症状をきたすこともある。

診断

造影MRIによる硬膜肥厚所見と腰椎穿刺により低髄圧の証明。

治療法

数週間で自然治癒することが多いので当初、経過観察
治らない場合は自家血硬膜外注入療法(ブラッドパッチ)という治療を実施する。

脳静脈血栓症

特徴

脳静脈に血栓が形成されることで静脈がうっ滞して発症する病気である。

症状

多彩な症状を示すので診断が遅れることがあるが、頭痛の他、痙攣や耳痛、脳神経麻痺、眼球浮腫なども症状としてありえる。

原因

薬剤性(ピルなど)、感染性(副鼻腔炎など)、抗凝固因子欠乏(protein C/S低下)等

診断

MRVという特殊な撮像方法で、静脈の欠損を確認する。

治療法

抗血栓薬(ヘパリン・ワーファリン)の点滴

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)

特徴

交感神経の過活動により脳血管が収縮して起こる強い頭で20-50歳女性に多く発症

症状

頭痛の特徴は1分以内にピークを迎える強い頭痛(雷鳴頭痛とも言います)

診断

MRIで脳動脈が2か所以上で収縮と拡張をしている所見。
一見くも膜下出血を疑うが、出血や動脈瘤はなく、かわりに血管攣縮(細くなったり、拡張したりする様子)を認める

原因

薬剤が60%を占めるとも言われている。他は特発性。

治療法

原因除去、鎮痛剤による対症療法

合併疾患

脳梗塞、頭のてっぺん部分のくも膜下出血(脳動脈瘤破裂ではない)、脳内出血、頸動脈解離などで、発症から1週間以内にこれらの合併症を発症することがある。

急性緑内障発作

病態

緑内障は閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障の2タイプに分けられるが前者で隅角が完全に塞がったりして眼圧が急速に上昇すると、急性緑内障発作が起こる。

症状

眼の充血や頭痛、嘔吐が出現し、放置すれば最悪、失明の可能性もある。

副鼻腔炎

特徴

いわゆる蓄膿症が慢性副鼻腔炎です。副鼻腔とは前頭部、頬の奥、目の間に位置する4つの空洞で、鼻腔と繋がっており、風邪などで、鼻腔の細菌が増殖し、粘膜の炎症が波及することで発症する疾患。

症状

前頭部や頬部の圧痛や叩打痛があること、下を向くと頭痛が増悪すること

診断

MRIで可能

治療法

急性副鼻腔炎は自然に改善することが多く、まずは経過観察。慢性副鼻腔炎は難治性であることがあり、長期抗生剤治療が必要となることもある。

帯状疱疹

特徴

体の片側に神経に沿って出現する強い疼痛を伴うことが多い赤い発疹。
免疫力が低下した時に出現すると言われている。

症状

全身のどこでも出来るが、胸、背中、額に多く、頭痛の原因となる。

診断

皮膚所見であるが、厄介なことに皮膚症状が出現する前に頭痛を感じることがあり、後に皮疹が出現し、帯状疱疹であったのかと診断が少し遅れてしまうことを稀に経験する。

治療法

抗ウィルス薬

側頭動脈炎

特徴

50歳以上の高齢者に多く発生する膠原病の一種

症状

顎跛行といって咀嚼筋の痛みや疲労の他、発熱、倦怠感などの全身症状を呈する。

合併疾患

全身に疼痛を伴うリウマチ性多発性筋痛症を30-50%の割合で合併する

診断

生検による病理診断

治療法

ステロイド

睡眠時無呼吸症候群

病態

睡眠中に上気道が部分的にもしくは完全に閉塞し、繰り返す低呼吸や無呼吸、体の中の酸素濃度低下などを引き起こす病気

特徴

中年期人口の20%に認められると言われており、男性が女性の2倍の罹患率

症状

頭痛は朝に出現し、両側性で、持続が4時間未満のものが多い

治療法

マウスピースやCPAP(持続陽圧呼吸療法)

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